よく分からない教室にて 2
「――それでね、菜々美ちゃんのそういうところが――来ちゃう……!」
あの後からずっと惚気を聞かされていた涼音は、げっそりとしながら、遂に救いが来たことを予感する。
予感するや否や、この小部屋に辿り着くまでに通ったよく分からない教室から声が聞こえた。
『気味の悪い部屋ではないの。涼音が苦手そうな場所ね』
『ここねがすぐそこにいるわ』
『ええ、私も感じるわ。涼音の気を』
『行くわよ!』
いつもなら呆れ果てる茶番劇だが、この状況では神からの救いに等しいものであった。
「まだ涼音ちゃんとお話ししたかったのに!」
「芹澤先輩が一方的に話してただけですよ⁉」
そう言いつつも、早く菜々美に会いたいここねは、涼音を置いて出て行ってしまう。
『菜々美ちゃーん!』
『ここね‼』
再会を果たした二人である。
「じゃあなんであたし連れてこられたんだろう……」
「待たせたわね」
「あっどうも」
涼音一人になった小部屋に涼香がやって来た。
「怖かったでしょう? でも安心しなさい! お姉ちゃんが来たわよ‼」
「誰がお姉ちゃんですか。……でもまあ、助かりました」
抱きついて来ようとする涼香を避けて、涼音は小部屋の外を確認する。
菜々美とここねはもういない。あまりにも早すぎる退散だが、今はそれがちょうどよかった。
涼香に向き直った涼音は、頬を膨らませている涼香の胸に飛び込む。
「不意打ち⁉」
驚いた涼香だが、涼音をしっかりと受け止めてあげる。
「怖がっだぁぁぁ‼」
今は二人しかいないし、恐らくこんな教室には誰も来ないだろうと、それと我慢の限界だったのだ。
そんな涼音の頭を、涼香は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしながら撫でる。
あまりの不意打ちに頭が真っ白に、だけど自動的に身体は動くのだった。




