家庭科室にて 2
「涼音に呼ばれた気がするわ」
「気のせ――私もここねに呼ばれた気がするわ」
顔を見合わせた二人。
考えていることは同じだ。
二人は同時に駆け出した――はずだったのだが、涼香の姿はどこにも無かった。
先に家庭科室の入り口にやって来た菜々美が振り返る。
そこには、案の定、床と平行になった涼香がいた。
「私のことはいいわ……早く行きなさい……‼」
緊迫した空気を出す涼香とは裏腹に、菜々美は「全く……」と言いながら、ゆっくりとした足取りで涼香の下へやって来た。
「相変わらずドジっ子ね……」
そう言って涼香を立たせてあげる。
いつもいつもこんな転び方をして、なぜ目立った怪我が無いのか不思議で仕方ないが、そもそもが不思議で謎すぎる人物なのだ。考えるだけ無駄といえよう。
「かかったわね‼」
立ち上がった涼香が、見計らったかのように菜々美の脇をすり抜け――家庭科室のドアにぶち当たった。
「えぇ……」
また涼香を立たせてあげる。
「痛かったわ」
「そうね。もう歩いて行きましょう」
「負けを認めるの?」
「あなたのことを心配しているのよ」
「私の勝ちね」
「話聞いてる?」
「行くわよ‼」
「もうっ……」
二人は各々搭載しているレーダーに従いながら、涼音とここねのいる場所へと向かうのだった。




