夢の中にて
夢の中のこと。
涼香の目の前には、サイズが異なる涼音が五人いた。
「なるほど、面白い夢ね」
いつものサイズの涼音と、それよりも頭一つ分小さい涼音と、涼香の腿ぐらいまでしかない、園児サイズの涼音。いつものサイズから頭一つ分大きい涼音と、涼香の倍はある大きさの涼音。
小さくなっているからといって幼くなっているという訳でもないし、大きいからと言って、バランスがおかしいという訳でもない。いわば縮小された涼音に拡大された涼音だ。
「「「「「先輩、あたし増えちゃいました」」」」」
「今回は涼香ちゃんと呼んでくれないのね」
いつもなら、夢の中の涼音は涼香のことを昔みたいに涼香ちゃんと呼んでくれるのだが、今日の夢の中の涼音はいつもと同じ先輩呼びだった。
少し残念そうな顔をした涼香であったが、涼音は可愛いので問題無い。
「まあいいわ。今日も可愛いわね。それで、どうして増えたの?」
「「「「「お風呂に入ったら増えちゃいましたね」」」」」
「まさか涼音、水風呂に入ったの?」
「「「「「うっ……水風呂です」」」」」
「それはいけないわ! 今すぐお姉ちゃんが温めてあげ――涼音が五人いるではないの⁉ 私にはどれか一人の涼音を選ぶなんてできないわ‼ でも私の大きさでは五人の涼音を温めることなんてできない‼ どうすれば……‼」
「「「「「先輩寒いですよー」」」」」
先輩呼びで甘えてくれる涼音もいいわね、と涼香は思いながらあれこれ策を練る。
「こうなれば、私も水風呂に入って増えるしかないわね‼」
そう決めて、どこからともなく現れた水風呂に飛び込む涼香であった。
「……なるほど……冷房が直接当たっていたのね」
目が覚めた涼香は、夢での出来事と今の状況を繋げる。時刻はまだ朝の四時、学校だからといって、こんなにも早起きする必要は無い。
身体が冷えていたため、一度トイレに行ってから再び布団に入ってタオルケットを被るのだった。




