昼休みにて 5
「そういえば、檜山さんのクラスって王子喫茶だっけ……?」
結局四人で昼食を摂ることになり、緊張感漂う中で平和な会話をしていた最中、突如としてその爆弾は落とされた。
涼音は夏美に据わった目を向ける。
「それは、どういうものなのかしら?」
夏美は冷房の風が当たってるのかな、と思いながら、詳しく聞きたがる涼香に言う。
「王子様のコスプレをする喫茶的なやつだと思います」
それを聞いて、黙っていた彩が口を開く。
「おいマジか……」
そのリアクションには、教室にいる三年生達も同じだ。ただ一人涼香を除いて。
それはつまり――。
「王子のコスプレをした涼音が見られるということね! いいではないの! 絶対に行くわ!」
「来ないでください、マジで、ほんとに、来ないでください」
「やっぱりこうなるか……」
「えっ、なんで――」
「あのな、夏美。この馬鹿が他の学年のいる場所に行けば騒ぎになるだろ? ただでさえこの学校の文化祭って騒ぎになるし」
「あっ、そっか……」
一応納得した様子を見せる夏美であったが、事の深刻さには気づいていない。深刻さを伝える気は無いが、これは早急に手を打たなければならない。
「あたし、文化祭休みますから」
「それはやめろ」
涼音と彩は、目だけで会話する。
(あんたがいないと他の場所で被害が出るだろ)
(いや、もしかすると先輩のテンションが下がっておとなしくなるかもしれませんよ)
(それも十分あり得るけど、盾は多いに越したことはない)
(それはそうですけど……)
(なんとかしてコスプレ回避は?)
(無理でした。厄介な相手がいて)
(そっちにもいるのかよっ)
そうやって話した後、重い息を涼音は吐く。それが教室中に充満して、皆一様に目を伏せる。
「……冗談ですよ」




