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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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昼休みにて 4

「今日は賑やかな昼食ね」

「いつも変わんないだろ」

「みっみみみ……水原(みずはら)先輩とご飯……⁉」

「緊張するなら帰れば? ほら、綾瀬(あやせ)先輩と」

「は?」

「いいではないの、お昼ご飯ぐらい」

「あんたさあ……」

「だ、大丈夫ですよ……頑張り、ます、から」

「頑張るなよ……」


 そんな風に賑やかな教室の一角。それとは対照的に、その周りでは厳戒態勢が敷かれていた。


 三階には似つかわしくない、二年生が一人。涼音(すずね)以外、基本的に下級生は三階には来ないのだが、今日は少し違った。


 夏美(なつみ)の落ち着きの無い動きに合わせ、(あや)と同じベージュに染められた、パーマをあててウェーブしているボブヘアーが揺れる。


 そして夏美の綺麗な顔は今、目の前に広がる絶景を見て凍りついている。


 直視したくてもできない、手が届く距離にあっても手を伸ばせない。


 なにも知らない人が涼香(りょうか)にする反応である。


 しかしそんな夏美のことなど知ったことではないと、涼音と彩は口を開く。


「他の場所で食べる?」

「綾瀬先輩と二人で食べたらいいんじゃないの?」

「どうせなら四人で食べようではないの」

「黙れ」「黙ってください」


 二人に睨まれた涼香は肩をすくめる。


 とりあえず、涼香がやらかさないうちにこの場から夏美を離したい一同である。


「いや、大丈夫です! 水原先輩に失礼が無いように頑張るので……!」


 それを夏美には言えない。そのため夏美との会話は噛み合っていないのだが、涼音と彩は話を合わせる。


「だから無理するなら帰ればいいじゃん……」

「あっそ、勝手にすれば」

「先輩も檜山(ひやま)さんも、心配してくれてありがとうございます」


 そう言って微笑みかける夏美。


「そういうことよ、仲良く食べようではないの」


 周りの心配をよそに、涼香は夏美の来訪をただ純粋に喜んでいた。

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