表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

596/931

休日にて

「はい、久しぶりのケーキです」

「……本当に久しぶりね」


 土曜日のこと。


 寝起きの涼香(りょうか)の前に置かれる、涼音(すずね)の手作りケーキ。


 涼香は目を擦りながら、目の前にあるショートケーキを見ていたが、やがて睡魔に負けてローテーブルに突っ伏した。


「えぇ……」

「もう食べられないわ……」


 そんな寝言を言う涼香の頭をベシベシ叩いて強制的に目を覚まさせる。


「痛いではないの」

「あたしの作ったケーキ、いらないんですか?」

「いるに決まっているではないの。でもそれはそれよ。眠たいのよ私は」

「はい、あーん」

「眠たいと言っているではないの――んっ、美味しいわ。少し変えたのね」


 強制的に口に入れても目が覚める訳ではなく、目を閉じながらケーキの変化を語る涼香。


「この少ししっとりとしたスポンジに染み込むような生クリーム。でもしつこくはなくて――」

「うるさいですね」

「――んっ、美味しいわ。少し変えたのね、この少ししっとりとしたスポンジに染み込むような生クリーム。でもしつこくはなくて――」

「うるさいですね」

「――んっ、美味しいわ。少し変えたのね、この少ししっとりとしたスポンジに染み込むような生クリーム。でもしつこくはなくて――」

「うるさいですね」

「――んっ、美味しいわ。少し変えたのね、この少ししっとりとしたスポンジに染み込むような生クリーム。でもしつこくはなくて――」

「うるさいですね」


 最後の一口を口に入れた後、涼音は涼香に質問してみる。


「いまあたしがなに考えているか分かります?」

「お姉ちゃん大好き。それにしても美味しいわ。少し変えたのね、この少ししっとりとしたスポンジに染み込むような生クリーム。でもしつこくはなくて――」

「誰がお姉ちゃんですか。ああもう、なんで同じことばっかり言うんですか!」


 涼音がぷんぷん怒るが、涼香の語りは終わらない。そしてようやく味の感想を伝え終えた涼香が得意げに答える。


「この思いを、涼音に伝えたかったのよ」

「さっさと寝てください」


 再びローテーブルに突っ伏す涼香であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ