ヨーロッパ部にて 2
「私に敗れた水原涼香ではないか」
前髪をかきあげたポニーテールの、元生徒会長こと東崎千春が、顎を上げて涼香に返す。
二人の間に火花が散りそうになったが、さっさと説明してほしい涼音はそんな茶番を打ち切る。
「なんで活動部屋が変わるんですか?」
「イエーイ、チハルー」
しかし淳子が千春に挨拶のハグを求めに行く。
なにが、私が説明しよう、だ。全くもって話が進まないではないかと、涼音は涼香の肩に頭をぶつける。
「急に驚くではないの。可愛いからいいけど」
「もう帰りましょうよ……」
「まあ待ちたまえ」
淳子のハグに応えながら、千春は椅子に座ろうと動く。一応話してくれる気はあるらしいので、涼音も渋々涼香と並んで座る。
「邪魔! もういいでしょ!」
「痛い‼」
座ってからもハグを終わらない淳子を投げ飛ばした千春と、日本人が出てしまった淳子。
千春は首を揉んでからようやく質問の答えを言う。
「部員のほぼいない部活は、私が生徒会長になった時に活動場所を変えるようにしたんだよ」
そう言われても、よく分からない涼香と涼音だったが、とりあえずなるほどとだけ返す。
「………………えーっと……。私が会長になった時に決めたんだよ。部員のほぼいない部活は前期と後期が変わるごとに活動場所を変更するって」
これで伝わるかな? と千春が言い直すが――。
「「なるほど……」」
「どう説明したらいいんだぁ⁉」
「違うのよ。私達が分からないのは、どうして活動場所を変えるかということなのよ」
「そんなの会長っぽいことしたかっただけだよぉぉぉぉぉ‼」
「「えぇ……」」
つまり、なにも分からない。なに一つ分からない。分からないことはないが、分からない。
「――ティータイムでもドウデショウ?」




