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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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ヨーロッパ部にて

 ヨーロッパ部――涼香と涼音の足を踏み入れた教室を使用している部活動だ。


「ワーオ、リョウカとスズネじゃアリマセンカー」


 片言の日本語で二人を迎えたのは碧眼(カラコン)の女子生徒だ。本当はプラチナブロンドにしたい髪色は校則で注意されるからか黒いまま。顔立ちはどことなくヨーロッパにいそうな顔立ちだが、ただの日本人。


 ヨーロッパにいそうな顔立ちなら、髪色を変えても地毛と言い切ればいいのではないかとよく言われるが、一度それをして頭髪検査で注意を受けた過去を持つ。


 ――谷川淳子(たにがわじゅんこ)、それがこの生徒の名前だ。


「ヨーロッパ部はここなのね」

「ハーイ、ソウデース」


 パタパタと駆けて来る淳子が挨拶のハグをしようとするが、涼音は涼香を引っ張り阻止する。


「谷川先輩ですか……」


 なんとも言えない微妙な顔の涼音。


「ハーイ、スズネもハグー」


 ターゲットを涼音に切り替えた淳子、それを避ける涼音である。


「ヨーロッパの人ってこんなにハグするもんなんですかね」

「いいではないの」

「モウっ、二人とも意地悪デス」

「ちょっと片言無理してません?」

「涼音、意地悪はやめてあげなさい」


 それから微笑んだだけの淳子が、ジェスチャーでこっちへ来てと言い、二人はついて行く。


 教室内は普段の教室と変わらない。変わっている点と言えば、壁にヨーロッパ諸国の写真が貼られているのt、ヨーロッパ関係の書籍があるだけだ。


「マダ、活動部屋が変わったばかりナノーね。だから飾り付けの段階デース」

「キャラーがブレブレーね」

「ナンーデ、部屋ーが、変わったーんデースか?」

「フタリトモ……イジワル……」


 口を尖らせた淳子である。


 そんなことをしていると、突如教室のドアが開け放たれた。


「私が説明しよう‼」


 このままでは話が進まない。どうやってかそれを感じ取ったのだろう。


 現れた生徒に、涼香が目を見開く。


「会長――いえ、元 会長ではないの‼」


 やって来たのは、夏休みいっぱいで任期を終えた、元生徒会長だった。

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