三年生の教室にて
「暑いわ。髪の毛を短くしようかしら」
ある日のこと。
突然の涼香の言葉に、教室内がざわめく。
「マジですか?」
三年生の教室にやって来ていた涼音も驚いていた。
「でも冬になると寒いのよね。知らないけど」
「冬は寒くても防寒すれば大丈夫でしょ」
とりあえず髪の毛の短い若菜が答える。
「そういえば、涼香ちゃんが髪の毛短い時期ってあったの?」
その後にここねが涼音に聞く。
「いや、無かったはずです。見たことないですもん」
「さすがに産まれた時は長くなかったわよ」
「それは恐怖映像でしょ……」
「今の長さでいいんじゃないんですか?」
「でも、短い方が事故の可能性は下がるよね?」
「「「「「「あー……」」」」」」
「髪の毛が原因の事故はした覚えないわよ」
確かに涼香の言う通り、長い髪の毛が原因でなにかがあったのなら、既に切られているはずだ。
それはこの場にいる誰もが気づいたことだろう。一同はどうするかと目を合わせて首を傾げる。そして視線は自然と涼音に集まる。
「えぇ……」
そもそも長くしている理由かあるのかは知らないが、涼音が短くしてと言えば涼香は髪の毛を切るだろう。そう考えると涼香の髪の毛がずっと長い理由も分かる気がするが、それは誰も言わない。
「……そのままでいいです」
「涼音が長い方が――」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ‼」
突然叫びだす涼音であった。




