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休み時間にて
休み時間のこと。
「夏って何なのかしら……」
「急にどうしたの?」
窓の外を見て、物憂げな表情の涼香に菜々美が聞いてあげる。
「違うのよ。ほら、夏といっても近年は暑すぎて外に出られないではないの」
「それはそうね。ここねも、強い日差しは苦手だから」
ここねの頭を撫でながら菜々美が言う。
「でも見なさい。チラホラと日焼けしているのがいるわよ。あれは海に行っていたわね」
「よく生きてるよね」
今度はここねが返してあげる。
涼香の視線の先には、こんがりと焼けたクラスメイトの姿が映る。恐らく受験が無いか終わった組だろう。
「涼音の水着……可愛いわね」
「涼音ちゃんが見えてるのね」
ここで菜々美は、海鮮が大好きな涼香は海に行かないのかと聞きたくなって止めた。確か以前、似たようなことを聞くと、溺れるのは辛いのよ、と答えが返ってきたのだ。
水難事故を減らすため、なにも言わないことにした菜々美である。




