昼休みにて
「お昼ね」
「そうですね」
ある日の昼休みのこと。
涼音は昼食を食べるため、涼香のいる三年生の教室までやって来ていた。
「……食べないんですか?」
弁当箱を広げる涼音とは違い、涼香は腕を組んだまま自分の弁当箱を見ている。
「食べるわよ。ただ、中身がそうめんだったらどうしようかと考えていたところよ」
思い出すのは夏休み中の昼食だ。夏休みの半分以上はそうめんだったのだ。
「さすがにそれはないんじゃ……」
「私もそれはないと思っているわよ。でもね、あの人を信用してはいけないのよ」
ちなみに夏休み後半、涼香は母に騙されて入試が九月だと思っていたのだ。
「でもそんなメリット無いことしますかね?」
「お弁当を交換しましょう!」
「えぇ……」
そう言うと、涼香は自分の弁当と涼音の弁当を交換してしまう。
もうなんでもいいやと、涼音が交換された弁当箱を開ける。
「鮭ではないの⁉」
中身はそうめんではなく、焼き鮭や卵焼き、煮物など、一般的に弁当に入れられるような食材だった。
机に身を乗り出そうとする涼香から、涼音は弁当箱を遠ざける。
「あげません」
「意地悪‼」
「先輩が勝手に交換したんですよ⁉」
「だって涼音のお弁当には魚が入っていないのよ⁉」
涙目になる涼香に心底面倒そうな顔を向け、涼音は焼き鮭だけを涼香にあげる。
そして空いた隙間から卵を見ると――。
「なんか入ってる……」
「う巻き玉子ではないの⁉ 涼音、やっぱり交換しなさい!」
また強引に弁当箱を交換される涼音であった。




