模試返却の日にて
夏休み明けの八月、三年生には模擬試験が行われる。
そしてその模試が終わり数日後、返却の時がやってきた。
返却された模試結果表をいつものように可愛らしい顔をしかめて見ている綾瀬彩のウェーブがかったセミロングのベージュの髪が揺れる。
なにかがおかしい。
志望大学の判定や、平均点など色々載っている中、彩が注目したのは学内での順位だ。
「嘘だろ……?」
特にレベルの高くない学校だ。だからそこまで気にすることはないはず。現に彩は今までの模試や定期テストでは、一位か二位だった。それなのに、今回はどの科目も全てが二位か三位だったのだ。
「誰だ、これ? あのクソギャルは無いだろうし……本当に誰だ?」
困惑している彩の呟きが、同じクラスの生徒にも聞こえていたのだろう。いつもとは違う彩の様子に、周りもざわめき出す。
「どうしたの、綾瀬彩」
その一人、菜々美が彩に声をかける。
「……ほら」
なんでよりにもよってコイツなんだよ、と顔に出しながら彩は結果を見せる。
受け取った菜々美は結果用紙を見て、彩と同じく困惑する。しかしその困惑は、彩のものとは違った。
「もしかすると……。いえ……そんなはずは……」
「なにか知ってんの?」
「……次の休み時間、確認しに行きましょう」
ここで悩んでいても仕方がない。それなら心当たりを当たった方が答えに近づくかもしれない。あと単純にここねに会いに行きたい。
ちなみにその、ここねに会いたい気持ちは九割九分九厘占めている。
「うっざ」
それを察している彩は、吐き捨てるように言うのだった。




