番外編 涼香と涼音 最後の晩餐(昼食) 3
「――ということで、残り少ない夏休み、あなたは朝から晩まで勉強よ」
「うわあ……」「………………」
なんでもないような一言の流れで恐ろしいことを言う涼香の母。
他人事の涼音は気の毒そうなリアクションを取るが、涼香は黙ったまま。
「先輩?」
涼音が揺すってみるが、ふにゃふにゃっと揺れるだけ。ただの屍――ではなさそうだが……。
「ショックが大きかったみたいね」
「なんで他人事なの……?」
「お揃いね」
「えぇ……」
一緒にしてほしくない。
動かない涼香をどうするか、涼音が抱きしめたら戻るだろうが、勉強中は涼音がいないため、涼音に頼るのは得策ではない。
「それじゃあ、昼食にしましょうか……海鮮」
「海鮮‼」
「うわびっくりした――って倒れた」
母のボソッと吐いた言葉に、涼香は跳ねるように反応したが、すぐにその場に崩れ落ちる。
「これは重症ね」
「かなりダメージ受けてるよ」
「まあいいわ。涼香、海鮮丼を食べに行くわよ」
「いや、先輩動きません――って動いた」
動いたはいいが、その目は虚ろで瞳にはなにも映っていない。
亡者のようにゆらりゆらりと、涼音がちょっと怖くなるような動きで、涼香は中学時代の体操服から着替える。
「……わざとですか?」
目と動きの割にはしっかりと準備をする涼香。
「涼音ちゃんも準備をしてきなさい」
「はあい」




