番外編 涼香と涼音 最後の晩餐(昼食) 2
涼香の誕生日が終わり、もう二学期が目の前に迫っている時――。
「あなた、入試の日はいつか知ってるの?」
唐突にそう言った母。
なぜ平日なのに母がいるのか。いつもなら、既に仕事に行っている時間だ。
涼音は、なにか嫌な予感するな〜、と思いながら涼香を見る。
「三月よ!」
「九月よ」
「「え?」」
そんな馬鹿な――と、空いた口が塞がらない涼香と涼音。
専門学校ではあるまいし、そんな早くから募集しているのかと、仮に募集していても推薦の生徒だろうと、一応目指す大学のことを調べている二人は思う。しかし、そう言っているのが涼香の母なのだ。
「なにを甘っちょろいことを言ってるのかしら。当然でしょう? 心配なら、宮木の子にでも聞いてみなさい」
涼香の進学予定の大学には紗里が通っている。それなら母よりも、紗里に聞いた方が確実だ。
早速涼香が紗里に電話をかけてみる。
「もしもし委員長? 少し聞きたいことがあるの。大学の入試っていつなの?」
「ちょっと先輩、スピーカーにしてください」
涼香がスピーカーにすると、紗里から質問に対する答えが返ってきた。
『九月ね。今年から少し変わったと聞いたわ』
「マジだ……‼」
紗里がこんな嘘をついているはずがないし、嘘をつく理由も無い。
『それじゃあ、頑張ってね』
そう言って紗里は電話を切ると、蝉の鳴き声がよく聞こえる。
「……涼香」
母がゆっくりと、一言一句聞き漏らすなと、罠にかかった獲物を見つけたかのようにニヤリと笑いながら言う。
「残りひと月、あなたが遊んでる暇は無いのよ」
恐ろしいものを見たような表情を浮かべる涼香であった。




