若菜と紗里 私のせい 16
「大丈夫よ」
心配してくれる若菜にそう伝える紗里。
「そっか……じゃあいっか」
心配されるのは嬉しい、若菜に見てもらえていると感じるからだ。それでもやはり、若菜を心配させてしまう原因に胸を痛める。
できればいつも、若菜には笑っていてほしい。そう願う紗里にとって、若菜の笑顔を奪った自分自身を許すことができない。
――自分の身勝手さが嫌になる。
「ごめんなさいね、嫌なことを話してしまって」
「別に謝らなくてもいいよ。だって、紗里ちゃんが私に言っても言わなくても、紗里ちゃんの過去は変わらないし、今までのことが無かったことにはならいし。むしろ、一人で悩むより、私と一緒に悩んでほしいし」
「若菜……」
ここまで思ってくれているなんて、その言葉を聞いてふと思う。今更ながら、あの時の話はほぼ告白だ。
(駄目、思い出したらっ……どうしっ恥ずかしいわ! もしかして私は若菜に告白してしまって⁉ それに、今の若菜の言葉……これって付き合っている相手に言う言葉だと思うのだけれど)
「でもそんな深く考えないでね⁉ 紗里ちゃんには今もいっぱい助けられてるから。その恩返しみたいな感じだし‼」
(なんて訳ないわよね……知ってた……)
紗里が自分を嫌になっても、そんな紗里を心配してくれる若菜がいる。
いつか――なんて先のことよりも、今あるこの時間を大切にしたい。紗里が自分を嫌になっていても、時間は関係無く進む。
「分かったわよ」
だから好きな人の目を覗き込んで。あなたには伝わらないと思うけれど、全ての思いを込めて。
「これからも、よろしくね」
それなら、好きな人の言葉を素直に受け入れ、今笑い合える時間を大切にする方がいい。




