涼香の誕生日会にて 15
「涼香の誕生日会――完結編、プレゼント渡し」
「なにが来るのかしら」
遂にやってきたこの時間。待ちに待ったプレゼント。
個人ごとのプレゼントでも良かったのだが、それだと数が多くなってしまうため、部活動単位でのプレゼントになっている。といっても、部活動自体が多いため、多くなることに変わりない。
「エントリーナンバー一、帰宅部――」
「すっごい変化球ですね……」
「甘いね涼音ちゃん、うちの高校は帰宅部も正式な部活であるんだよ」
「えぇ……」
それは事実なのかと、涼香を見て紗里も見る。すると二人ともそれを肯定するかのように頷いた。
「えぇ……」
涼香だけならまだしも、紗里が頷くということはそれは本当なのだろう。
そして、帰宅部代表として前に出たのは黒く長い髪の毛を一つの三つ編みの生徒、補習常習犯である三田理子であった。
「わたしたち帰宅部から水原へのプレゼントは、これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
ことん――と、理子の勢いに反して、優しく机に置かれた小さな袋。少し盛り上がっているが一体――。
「……なんですか?」
涼音がその袋を持った涼香に問いかける。
「私が当ててあげるわ」
涼香はしばらく袋を触った後答える。
「靴べらね」
「ああ、靴べらですか」
まだ開けていないが、涼香の答えに納得する涼音の正面で。
「くそっ! 当てられた‼」
まだ開けられていないのに悔しがる理子である。
「まだ開けてないのになんで答え言うの?」
同じ帰宅部の生徒に咎められながら、ダメージを負った理子は運ばれていく。
涼香が袋を開けると、そこには言った通りの靴べらが入っていた。持ち運びができる、小さな携帯靴べらだ。
「良いではないの!」
「これは出先で助かりますね」
涼香にも、涼音にも好評である。
それを見た帰宅部員達は鼻の下を擦っている。
「さあ得点は!」
「ねえ若菜、プレゼントに点数をつけるのはどうかと思うのだけれど……」
「大丈夫だよ紗里ちゃん、最初から点数つけるって話だから」
「そうなの……、それならよかったわ」
このプレゼント渡しで、一番ポイントが高い部活には豪華賞品が用意されている……らしい。
「三百八十六点よ!」
「満点はいくらなの……」
「四百二十七点です」
「涼音ちゃんまで……」
なかなかの高得点に会場が盛り上がる。
「靴べらという普段使いができる物、だけどあまりプレゼントでは選ばれない。帰宅部らしい、いい線をついたプレゼントね、面白いわ」
涼香のコメントに、帰宅部員達はみんなで抱き合う。
これに関しては涼音は適応しているらしく、紗里が困惑する番であった。




