涼香の誕生日会にて 10
「ということで、スペシャルゲストの紗里ちゃんでーす」
紗里が来たことを改めて若菜が紹介する。
元々来ることは知っていたが、お土産のアイスのおかげもあって更に歓迎ムードだ。
「なるほど。私の誕生日会なのに、委員長に持っていかれたわね」
「なにがなるほどなんですか」
地味に主役が自分から紗里に変わっていきそうな気がしたが、アイスが美味しいから別にいい。
ちなみに涼音のケーキは誰一人一口貰えなかった。
「この後はなにをするの?」
そんな涼香の様子を知ってか知らずか、紗里はこの誕生日会の続きを促す。
「ご飯だね」
「まだだったの?」
てっきり、ご飯を食べてからケーキだと思ったのだが、まさか先にケーキだったとは。
そもそも、こんな二百五十人はいる三年生全員で摂れる昼食などあるのか。
まさかなにか宅配してもらう訳ではあるまい。
「二回戦――昼食」
マイクを持った若菜が言う。その近くで――。
「ねえ涼音。嫌な予感がするわ」
「私もです。この人数のご飯なんてアレしかないですよね」
恐らくアレだろう。この夏散々味わってきた白く細い麺――。
「流しそうめーーーーーん‼」
若菜の言葉に盛り上がる一同とは裏腹に。
「今月の昼飯ほぼそうめんじゃないですか‼」
「確かに学校で作ってみようかと思ったけどあんまりではないの‼」
崩れ落ちる涼香と涼音であった。




