涼香の誕生日会にて 3
名前順に『三年生全員による感謝の言葉』は進み、今はた行だ。
まだ半分もいっていないが、中だるみした様子は無い。そして、次は彩に続いて意外な人物――津村真奈だった。
『水原には数えきれない憎悪を憎しみを恨みを持っている。感謝することは無い――と言いたい。本当に言いたい。だけど、あの時、凜空を助けてくれたことは不本意ながら、本当に嫌だけど、仕方なく、凜空が無事だったから、感謝する。だけど凜空には触れるな、凜空を助けた時、凜空に触れてその手、凜空の肌に触れたその手、切り落としてやる、あと同じ空気を吸うな。保健室は凜空のための場所、そこに足を踏み入れるな。足さえ無ければ足を踏み入れることなんてできない。そうだ、そうしよう。
いや違う、それは今じゃない。凜空が一番、それが大前提、凜空を困らせるのなら容赦しない。ただでさえ水原のやらかしを凜空が責任を取っている。……やっぱりおかしい、水原が存在しなければ凜空が責任を取ることなんてないのに。そうか、簡単なことだったんだ……。
違う。それはまた今度。
……………………………………凜空が以前、水原のおかげで学校が楽しい的なことを言っていた。それは誇ってもいい。だから、水原の存在はマイナスが殆どだけど、プラスの面もあるということ。
だから、素粒子よりも小さな感謝を』
真奈の言葉が終わる。殆どが物騒なことだったが、いつも通りのため、誰も気にしていない。
「嬉しいことを言ってくれるではないの」
「嬉しい要素素粒子よりも小さいんですよ⁉」
「でも待ちなさい。素粒子はこの世で一番小さい物、それよりも小さい物は存在しない。……感謝は存在していないではないの‼」
「ああもう、中途半端に賢くなるから」
「別にいいけれど」
「いいんですか……」
「感謝は強要するものではないのよ」
まともなことを言う涼香である。




