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涼香の誕生日会の準備中にて 6
「聞こえてるかしら?」
各教室で機材を準備していた菜々美は、モニターに映る、前髪を空色のカチューシャで上げた生徒に向かって話しかける。
『バッチリ! カメラも問題無いよ!』
その相手は、とろんと下がった眉と目が、今にも眠ってしまいそうに見える見た目とは裏腹に張りのある声で答える。
「麻耶、そんなに声を張らなくて大丈夫よ」
『ごめんね!』
「その音が割れる手前の絶妙な声量やめて」
スピーカーの音量を下げた菜々美は、他の教室のモニターも確認する。
映像はタイムラグ無しに映され、マイクとスピーカーも問題無い。準備は順調に進んでいる。
「問題は無いわね。後は――」
後は、涼香がやらかしても大丈夫なように、機材を保護するだけだ。いくら盗撮犯からの借り物とはいえ、借り物は借り物だ。丁重に扱わなければならない。
緩衝材を使って、保護を進めていく。
これが菜々美達一班の主な仕事になっていた。




