夢の中にて 12
今日はようやくやって来た涼香の誕生日だ。まだ夏休みというのに、学校には三年生全員が集まっている。
各クラスの教室の中に、借りた高性能カメラを設置。画面越しだが、リアルタイムで映像は流れる。
「なんで涼香がいないの?」
「確かに、涼音ちゃんはいるのにどうしてかな?」
準備を終えた菜々美とここねが首を捻る。
「なんか、先に行ってくれ、と言われまして」
「えぇ……」
「大丈夫かな……」
菜々美とここねを含め、全員心配してくれている。涼音も心配している。
ではなぜ涼香一人だけを置いてきたのか、それはひとえに夢の中だからである。
「開始時間の十一時三十二分に到着するらしいですよ」
「刻んだわね……」
「涼香は電車で来るの? 駅からだったら分かるよね?」
若菜も呆れたように言う。
涼音もなにがなんだか分からない。
あれよあれよと言っているうちに、開始時間になろうとしていた。
そして、開始時間の十一時三十二分になった瞬間――。
廊下の窓が割れ、教室の中に涼香が飛んできた。
激しい音が鳴り、教室が粉々になる。そしてなぜか怪我人はいなかった。
「来たわよ‼」
「時間ピッタリですけど!」
「なんで空から⁉」
「細かいことはいいではないの。ほら、開始時間よ。祝いなさい‼」
涼香の背後で、ヒーローさながらの爆発が起きる。
その爆発でアルコールランプの火をつけてるここねを、恐ろしいものを見たような表情で見る菜々美。
なにがなんだか分からない涼音は頭がクラクラしてきた。
しかしクラクラしてきた理由はそれだけでなく、崩壊した天井から真夏の太陽がこんにちはしていた。これは熱中症かもしれない。
そんな涼音の様子を見た涼香が、太陽に手を向ける。
「消えなさい!」
手からエネルギー波を出して太陽を破壊した。
太陽が消え、そして地球に氷河期がやって来た。
「うぇあっ⁉」
飛び起きた涼音は隣で寝ている涼香を見る。
なにか変な夢を見ていたらしい。夢の内容は思い出せないが、とんでもない、だけどどうでもいいような、夢らしい夢というか、訳の分からない夢だ。
恐らく涼香が関係しているのだろうが、どうも思い出せない。
「マジでなんだったんだろ……」
寝ているはずなのに酷く疲れた涼音は、無心で涼香の頬をつんつんする。
そして二度寝しようかどうかと迷い、結局時間を見て起きることにする。
久しぶりにケーキでも焼こうかと、涼香を起こさないようにベッドを降りるのだった。




