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盆休みにて 4
「はあ……」
夕方頃――再び床に寝転んでいる涼音がため息をつく。
「はーあ……」
わざとらしく。
「はーあ!」
なにか言ってほしそうに。
「はーあっ‼」
「どうしたの?」
涼音のアピールに、涼音の母が困った風に声をかける。ちなみに、涼音が寝転んでいるのは祖父母宅の一室だ。
「別に」
「じゃあそのわざとらしいため息は止めてほしいな」
「はぁぁぁぁぁあ‼」
「涼香ちゃんロスが凄すぎる!」
母の悲痛な叫びが祖父母宅に響く。
「別に、先輩がいるとかいないとか関係無いから」
「誤魔化さずに素直になろ? ね? ほら、涼音ちゃん。涼香ちゃんがいなくて寂しい――って言って?」
「別に先輩がいないからじゃないし」
明らかに涼香がいないから機嫌が悪いのだが、本人は頑なに認めようとしない。
「…………」
「別に先輩がいないからじゃないもん!」
「なにも言ってないよ」
「…………ふんっ」
もうなにも言うまいと、その場で目を閉じる涼音であった。




