ベッドの上にて 9
長期休みであればどうしてもなってしまうもの、それは昼夜逆転だ。
例に漏れず、涼香と涼音もこの昼夜逆転に苦しめられることとなる。
「眠れないわ」
「あたしもです」
一日中なにもせずいると、まったく疲れず夜を迎えることになる。それに加え、早起きしているならまだしも、涼香は基本休みの日は昼過ぎまで寝ているし、涼音も夏休み中は早起きしてお菓子を作ることも少なく、昼過ぎまで寝ている。
その二つが積み重なり、眠れぬ夜を過ごすことになるのだ。
「今年もこの時期が来たわね」
「なんででしょうね」
「完全に身体が夏休みに染まったかららしいわ。お母さんが言っていたわ」
「なるほど」
このまま時間が過ぎ、夢の中に入るのは空が白んで来た頃だろう、そして起きるのは昼を過ぎた頃。全く眠れないのに、一度寝ると長時間眠ってしまう。無理して睡眠時間を少なくすると起きた後が辛いのだ。理不尽である。
「子守唄――」
「いらないですね」
「鼓動を聴くと落ち着くわよね」
「試します?」
すかさず涼香の胸に頭を当てる涼音。自分が先に寝てやろうという魂胆が丸見えだった。
「ずるいわよ!」
眠れぬ夏休みの夜、二人は太陽が昇るまで争うのだった。




