表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

470/929

水原家にて 35

 その日の夕方、涼香(りょうか)の母が帰宅してきた。


 リビングのテーブルにはお小遣いの入った段ボールが置かれている。


「答えを聞こうじゃないの」


 リビングに入るや否や、そう言う母に腕を組んだ涼香が答える。


「明日答えるわ!」

「時間切れ」


 そう言って赤色のボタンを押す。


「ああああ‼ なにをするのよ!」


 涼香が母に掴みかかるが、それを母はいなした。


「よく見なさい」

「やっぱりどっちでもよかったんじゃん」


 涼音(すずね)が『お小遣い』と書かれた封筒をケースから取り出す。


「なんですって⁉」


 恐ろしいものを見たような表情を浮かべる涼香。


 なぜケースが開いてお小遣いが手に入ったのか。


「涼音ちゃん。説明してあげなさい」

「面倒だからやだ」

「反抗期?」

「この親子は……‼ 分かりました、説明すればいいんでしょ!」


 涼音が、未だに恐ろしいものを見たような表情を浮かべている涼香のスマホを勝手に取る。


「ほら開いてください」


 涼香に母とのトーク画面を表示させると涼香を椅子に座らせて説明を始める。


「『明日の昼食はそうめんかそうめんではないか』『そうめんだと思うのなら青、そうめんでないのなら赤のボタンよ』このメッセージを単純に考えればいいんですよ」

「考えたわよ」

「どこがですか」


 不満げに言う涼香を鼻で笑う涼音。


「そうめん()()()()()()()、と、そうめんで()()()()()。この違いですよ」

「決めるのは私達の自由だと言いたいの?」

「はい」


 そうめんだと思うのなら――つまり、明日の昼食でいつも通りそうめんを用意されていると思うのなら、ということだ。それは涼音が言った通り、なにもしなければ、どうせ明日の昼食はそうめんなのだ。

 そうめんでないのなら――これは、入れ替えた災害食を食べればいいのだ。災害食を明日の昼食として食べるかどうか、それを決めるのは涼香と涼音の二人だ。


 つまり、どちらでも正解なのだ。


 そういったことを説明した涼音。


「理解できました?」

「そっちだったのね……」


 さも最初から分かっていたような雰囲気を醸し出しながら、涼香は髪を払うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ