夏休みにて 31
夏休みのこと。
「そうめん……ねえ……」
「なんでここまでそうめんを推してくるんですかね」
今日も今日とてそうめんだ。
「涼音の家に行ってもそうめんでしょう?」
「はい、それはもうたっぷり」
「私の計算が正しければ、そうめんは共有されているわね」
「うわ嫌な計算」
夏休み特有のそうめんラッシュ、最早嫌がる素振りをすることができない。
ご飯の時間は、和気あいあいと楽しいのだが、もう感情を無にして食べるしかない。楽しい昼食が、そうめんと同じ味気無いものになってしまった。
「美味しい物、食べに行く?」
「でも暑いんですよね……」
部屋の照明を点けなくても明るい日が差す真夏の昼。
「と言っても、最近涼音は出かけすぎではないかしら?」
「できれば出かけたくないんですけどね」
「私と一緒でも?」
「それなら出なくても大丈夫ですから」
「そうなのよね」
そんな会話をして、窓を見ていた二人はテーブルの上に目を向ける。
「…………減ってませんね」
「食べるしかないわね」
同時にため息をつく二人であった。




