ここねの部屋にて 5
「――はっ」
「あ、起きた」
それからすぐに菜々美は目を覚ました。若菜はここねから、カメラのことを教えてもらっている最中だ。
「おはよう、菜々美ちゃん」
「おはよう……若菜に教えているのね」
軽く頭を振ってからここねに返す菜々美。
「もうバッチリ、後は各クラスの代表者に説明するだけ」
ピースしながら若菜が言う。各クラスでカメラを任せられる人に連絡する役を買って出てくれるらしい。
若菜への説明が終わると、特にやることは無い。強いていうなら各クラスに連絡するだけなのだが、それは今すぐでなくても問題無い。
手持ち無沙汰な涼音が自分のスマホを見る。スマホのディスプレイには、時計だけが表示されている。
「もう昼過ぎてますね」
朝も中途半端な時間に出てしまったのだ、気がつけば十三時を過ぎていてもおかしくない。
「わあ、もうそんな時間が経ってたんだ。お昼ご飯食べてく?」
この時間なら飲食店はどこでも空いているだろうが、わざわざ食べに行くまでも無いとここねは思ったのだ。
「いやあ……それは遠慮しようかな……」
もしやここねの両親とご飯を食べるのだろうか、そのイメージをした若菜が再び固まりかける。
「大丈夫だよ、わたしが軽食持ってくるだけだから」
「あ、じゃあ大丈夫」
「じゃあ決定、菜々美ちゃんと涼音ちゃんもいいよね?」
「ええ、大丈夫よ」
「はい、芹澤先輩がいいのなら」
「じゃあちょっと作ってくるね!」
そう言って立ち上がったここねは、部屋から出ていくのだった。




