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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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ここねの部屋にて

 ここねの両親に挨拶を終え、ここねの部屋へやって来た一行。


「……何畳?」

「十五畳ぐらい?」

「…………倍以上だ」


 部屋へ入るや否や、隅っこで三角座りをする若菜(わかな)涼音(すずね)も、あまりの広さにどうすればいいのか分からず、とりあえず壁際に寄る。


「どうしたの?」

「遠慮しないでいいよ?」


 菜々美(ななみ)とここねが不思議に思いながら二人に聞くが――。


「いや……」

「広すぎるんで……」


 などと言って、ソワソワしているだけだ。


 部屋のレイアウト自体はあまり若菜や涼音達と変わらない。家具の数も変わらない少し広い部屋は、淡い色の壁紙やカーペットのおかげでそこまで寂しく見えない。


「あっ! カメラを忘れたわ」


 そこで菜々美は、カメラを忘れたことを思い出した。


 慣れた雰囲気を出している菜々美であったが、やはりここねの家に来る時はかなり緊張しているのだ。


「取りに行かないとダメだね」


 菜々美と一緒に取りに行こうとするここねに手を伸ばす若菜。


「待って私達を置いて行くの⁉」


 恐ろしいものを見たような表情の若菜。


「涼音ちゃんと二人だし大丈夫だよね?」


 と微笑むここね。


「あたしも手伝いますよ」


 しかしそんなこと関係無いと、涼音も二人について行こうとする。


「待って涼音ちゃんは行かないでぇぇ!」

「えぇ……」


 だが、若菜は涼音を行かせようとしない。自分も車に取りに行くという選択肢は、どうやら若菜には無いようだ。それもそうだ、一階に下りてしまうと、ここねの両親に会ってしまうかもしれない。両親が優しくてホッとしたが、それでも緊張は無くならないのだ。


「じゃあすぐ取ってくるね! 行こっ、菜々美ちゃん!」

「ああ‼」


 その隙にここねは菜々美を押して部屋から出て行ってしまった。


 涼音は行き場を無くした手を下ろすと、若菜になんとも言えない視線を向ける。その視線を受けた若菜は、曖昧な笑みを浮かべるのであった。

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