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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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芹澤家の前にて

 広い駐車場には屋根があり、夏の日差しが苦手なここねも大丈夫になっている。だからといって夏は暑い、外に長居するつもりは無い。


「じゃあ一列になって。わたしの後ろに菜々美(ななみ)涼音(すずね)ちゃん、一番後ろは若菜(わかな)ちゃんね」


 芹澤(せりざわ)家の大きさは、若菜の家の倍はありそうな大きさだ。こんな大きい家に四人家族で住んでいるなんて、もしかすると部屋が余っているのではないか? と若菜は考えるが、それ以上は怖くて考えられなかった。


「じゃあ行こっか」


 三人の方を振り向き、ここねが声をかける。


 そしてその時、家のドアが音を開く音がした。


 何者かの気配を感じ取ったここね、表情が抜け落ちた顔で振り向く。


 涼音達も吊られてドアの方を見ると、そこに立っていたのは、ここねより特別高いという訳ではないが背は高く、メイクをしていても顔はどことなくここねに似ている、一人の女性が立っていた。


 ここねの雰囲気も相まって、間違い無くその人物がここねの姉だろうことが分かる。


「ここねちゃん⁉ おかえりぃぃ‼ 菜々美ちゃんも来たんだあああってその後ろの子はなに⁉⁉ めちゃかわ‼ 可愛すぎる‼」


 そんなことを言いながら、こちら側へやって来るここねの姉。


 そんな姉から菜々美は目を逸らし、涼音は、うわぁ、という顔をする。ここねの姉から感じる雰囲気に嫌なものを感じる。


 やって来た姉の正面に立ちはだかるここね。これ以上は先に行かせまいと笑顔を浮かべる。


「菜々美ちゃん、先に入っておいてくれるかな?」

「あ……うん」


 ここねが止めている間に、菜々美が先導して涼音と若菜を家に入れる。


 そして涼音が横を通る時――。


「待って、その子めちゃかわすぎる」


 そう言っていきなりスマホを涼音に向ける。


「なんで勝手に撮ろうとしてるの? 学習能力無いよね?」


 そのスマホを握り潰す勢いでここねが掴む。そうされるとレンズは塞がり、写真は撮れない。


 涼音にとっても、想像通りのことが起こった。今は止まらず早く家に入ろうとする。


 緊張でガッチガチの若菜の手を引きながら菜々美に続くのだった。

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