車の中にて 8
「それで、どこ行くの?」
車が走り出してからしばらく。若菜もどこへ行くのか知らされていないらしく、前方を睨みつけている菜々美に問いかける。
「それは、着いてからのお楽しみよ」
「どういう系かだけ教えてくれない?」
「だめー」
菜々美の代わりにここねが答える。察するに、ここねはどこへ行くのか知らされているらしい。
「まあいいけどさ」
それならおとなしくしておこうと、若菜が座席に沈み込む。
「一学年丸ごと入れる施設ってあるんですかね? あたしらみたいな一般人が使える」
「結局、一周回って学校とかありえるかもね」
涼音の疑問に若菜が合わせる。
「そっ、それはどうかしらあっ!」
思いっきり声を上ずらせる菜々美。
「学校かあ」
「学校ですね」
しかしそうなるのなら、他の学年対策を講じる必要がある。涼香の誕生日を祝うとなると、二年生や一年生まで騒ぎになってしまう。
「あてがあるって言ってたのに……結局学校か」
敢えて若菜は、期待外れだ、という空気を出す。
「あてがあるのはあるのよ!」
みゅっとした顔になった菜々美が言う。
「バレちゃったね」
「もうっ」
人数が多いのなら、慣れ親しんだ場所でやる方が各々動きやすいだろう。他の学年対策はどうするのかさておき、学校でよかったなと少しばかり安堵する涼音であった。




