夏休みにて 29
「そういえば涼音」
「なんですか?」
「……なんでもないわ」
「えぇ……」
夏休みのこと。
時刻は間も無く正午を迎える。
「そろそろお昼ご飯ね」
「そですね」
ここで涼音は、涼香がなにを言いたいのかが解った。
今日の昼食はなんなんだと聞いているのだ。
「そうめん?」
「そうめん」
最早夏休みの風物詩と言っても過言ではないだろう。夏休みのそうめん率はかなり高い。涼香と涼音の家だけが高い気もするが、他の家はどうなのかと聞く気にはならない。
「またそうめんなの……」
「在庫が増えてましたよ」
「…………」
その場で涼香はバッタリと倒れる。動く気力すら奪うそうめんラッシュ。今のところ、夏休み中の昼食の殆どがそうめんだった。
「そうめんってどうやってもそうめんですもんね」
一応、そうめんのアレンジレシピなるものを試してみたりしたのだが、なにをどうやってもそうめんだったのだ。
涼香の隣に涼音も倒れる。
そうやって二人黙って天井を見つめていると、不意に涼香が跳ね起きる。
「そうよ! まだアレを試していないではないの!」
涼香自身から希望のオーラ的なものが溢れ出てるような気がする。
「え、急になんですか?」
「お姉ちゃんに任せなさい!」
「誰がお姉ちゃんですか」
アレとは一体なんなのか、どうせいつもの通りしょうもないことだろう思うのだが、涼音は楽しみであった。




