涼香の部屋にて 25
「先輩、もういいですか?」
「だめよ」
涼香が涼音の胸に顔をつける。涼音のゆっくりとした鼓動が心地いい。
両親の前では気丈にというか、いつも通り振舞っていたが、こうして二人になると、涼香は甘えてきた。恐らく涼香の両親は娘の様子がおかしいことに気づいていたが、なにも言わないでいてくれた。
「そろそろいいんじゃないですか? 委員長と春田先輩にはあたしから説明しておきますから」
涼香がこうしている理由は、紗里に家まで送ってもらっている最中、涼香が涼音にキツイ言い方をしたことを後悔しているからだ。ついでに紗里と若菜に気を遣わせてしまったことへの後悔もある。
「いいわよ。自分でするわ」
そう言うが、涼香が涼音から離れる気配は無い。仕方なく涼音は涼香の頭を撫でる。
今日はもう少しこうしておこうかと考える。
しかし、そう思った時に限って思い通りにはいかない。涼音のスマホに通知が入る。目を向けると、若菜からメッセージが来ていた。
「春田先輩からメッセージ来ましたよ、先輩の心配してくれてます」
「どうして私に直接言わないのよぉぉ」
「えぇ……」
そりゃ直接聞けないだろう、と涼音は思ったが、それで涼香はすねたらしく、若菜に電話をかけだした。自分からしてくれるのなら別にいいかと特に止めず、離れた涼香を後ろから抱きしめる涼音であった。




