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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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車の中にて 6

「助かりました〜」


 解散した後、涼香(りょうか)涼音(すずね)は、紗里(さり)の運転する車で送ってもらっていた。


 暑い中、歩いて駅へ向かう(あや)夏美(なつみ)明里(あかり)の三人には申し訳ない気もするが、送ってもらえと言ったのが明里なのだから、申し訳ないと思わなくてもいいのかもしれない。


「さすが委員長、頼りになるわ」

「そう言ってもえると嬉しいわね」


 紗里の運転する車に乗っているのは、助手席の若菜、後ろに涼香と涼音の定員限界の四人だ。


「それにしても、やっぱり紗里ちゃん強いよね……。なんでオリンピック目指さないの?」


 シートに沈み込んだ若菜が、深いため息とともに言う。


「確かに、委員長ならどのスポーツでも世界取れるんじゃないんですか?」


 若菜と涼音の言葉を受けた紗里が答える。


「興味が無い、というのが一番の理由ね。後は……上には上がいるから、かしら?」

「上には上がいるって……冗談ですよね?」

「なんか自信無くしちゃうね」

「冗談ではないわ。事実、私より父の方が運動できるもの」


 面白いものを見たかのように笑って答える。


 紗里を超える運動能力を持っているとは、紗里の父親は人間では無いのか。


「委員長のそれは遺伝らしいわね」


 すると、訳知り顔の涼香が入ってくる。


「お母さんが言っていたわ」

「え、あたし知らないんですけど」

「涼音が出かけていた時の会話だからよ」


 二人のやり取りの間、驚いた若菜が紗里へ聞く。


「どういうこと?」

「私の父と、涼香ちゃんと涼音ちゃんのお母さんは高校の同級生らしいのよ。私も驚いたわ」


 紗里がそれを知ったのはつい最近、父との買い物中に涼香の母に会った時だ。


「待って涼音ちゃんのお母さんも⁉」

「そういうことになりますね」

「世間狭……」

「世界や社会は広くても、世間は狭いものということを実感したわ」

「ちなみに私と涼音の父親もその三人と同じ学校よ‼」

「ちなみにあたしの父親だけ一学年下です」

「…………そんなことってあるんだあ」

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