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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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屋内型複合レジャー施設にて 19

 そして次、涼香(りょうか)のいるレーン以外は、これで全員終わる。


 (ゆず)(あや)真奈(まな)の三人だ。


 順に、ストライク、五ピン、三ピン。


 「イエーイ! ストライクー!」


 若菜(わかな)のように喜ぶ柚。


 「スペア狙いか……」

 「先輩、頑張ってください‼」

 「がんばれー」


 スペアを狙う彩を応援する夏美(なつみ)明里(あかり)


 「……………………」


 無言の真奈達。


 涼音(すずね)は、真奈が求めているのは凛空(りく)の応援だけだというのを解っているため、無言で見ていた。


 しかし、当の凛空はというと、真奈の投球は見ておらず、彩を見ていた。


 真奈もそれに気づいており、二投目を投げずに、恐ろしいものを見たような表情で凛空を見ていた。


 「大河(たいが)先輩、津村(つむら)先輩を見てあげてください」

 「んぁ? あーごめんめん、真奈頑張ってー」


 その瞬間固まっていた真奈が二投目を投げる。残りのピンを全て吹き飛ばしてスペアをとった。


 「おう、やっる~」

 「わーすごい」


 へったくそな口笛を吹いた凛空が感心する隣で、若干引き気味の涼音であった。


 

 涼香達は四人のため、他の組と進む時間が違うのかと思ったのだが、若菜、柚と、二人連続でストライクだったため、他の組の二投目の時には紗里(さり)が投げる番となっていた。


「もう私の番なのね。……力加減を気を付けないと」

「くるわよ! 二人共……っ」


 涼香がそれっぽいことを言って、若菜と柚もまたそれっぽく頷く。


 紗里は十三ポンドのボールを指先で、バスケットボールのハンドリングのようにくるっくる回しながら立つ。


 助走をつけるべきか、その場で投げてみるべきか。


 周囲の状況を見て、僅かに悩んだ末に出した答え――。


「少しだけなら、大丈夫なはず……‼」


 軽く三歩後ろに下がり、三歩歩いてボールを放つ。


 あまりの速さ、高性能ハイスピードカメラでも捉えきれるか分からないその速度、ボーリング場の中で激しく風が渦巻く。ピン達も逃げることのできない、このままいけば壁を貫通してしまう。しかし放たれたボールはレーンの上を紙一枚入るか入らないかぐらい浮いており、凄まじいバック回転がかかっていた。ピンに当たる直前に速度を落したボールが、何事もなかったかのようにピンを全て跳ね飛ばす。


「これぐらいで大丈夫かしらね」


 モニターにストライクの文字が流れる。一瞬の出来事、しかし涼香と涼音、若菜と柚はなにが起こったのか理解していた。


 それを見てしまった彩や凛空はなんとなく理解してしまう。


「え……マジ?」

「マジです」

「やっば……‼」

「なにが起きたんですか? なんかすごい風が吹きましたけど」


 そうして驚く二人、若菜は分かる分かると頷く。


「分かるよ、その気持ち」

「あら、ボールが壊れてしまっているわ」


 戻ってきたボールを見た涼香が言う。


 若菜と柚も見に行く。


「ボウリングのボールってこうやって壊れるの?」


 ボールは欠けてこそいないが、遠心力のせいか僅かに形が変わっており、亀裂が走っている。


「後で店員さんへ誤りに行っくるわね」


 すぐに行きたいが、まずは涼香の番が終わってからだ。

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