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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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屋内型複合レジャー施設にて 9

「あっ、戻ってきた」


 涼音(すずね)(あや)がお菓子を取ろうと悪戦苦闘している最中、涼香(りょうか)(あや)が戻ってきた。


「ほんとだ、先輩! なんですかそのカワウソは⁉」

「なんでもいいでしょ」

「私からのプレゼントよ」

「こいつ……」


 とは言いつつも、内心涼香の感謝でいっぱいの彩である。


 そんな中、涼香が涼音達の狙っていた景品を見る。


「とってあげましょうか?」


 彩にだけあげるのはアレだし、涼音は夏美の分を取ってくれと頷く。


「あ、お金はあたしが」


 そうして、涼香がプレイする。


 涼音と彩では歯が立たなかったのだが、涼香がすると、驚く程簡単に獲得することができた。


「はい、夏美にあげるわ。綾瀬(あやせ)彩だけでは不平等でしょう?」

「いいんですか⁉」

「遠慮せずに受け取りなさい」


 そう言いながら、バレないよう彩に向かって、綺麗なウインクをする。


「ありがとうございます! 先輩見てくださいよ! 私も貰いました!」

「知ってるから、見てたから」


 そんな二人を置いて――。


「涼音はなにか欲しい物あるかしら?」

「特に無いですね」

「あのチョコレートが欲しいのね‼ お姉ちゃんに任せなさい!」

「無いって言ってますよね?」

「私が欲しいの」

「じゃあ聞かないでもらえます? あと誰がお姉ちゃんですか」


 しかし涼香は全く聞いておらず、早速チョコレートを獲得していた。


 そして取った後、涼香は恐ろしいものを見たような表情を浮かべる。


「持って帰る時に溶けるではないの⁉」


 今は夏、そして帰りは電車である。ここから駅まで歩くし、駅から家までも歩く。


 日が落ちていても、チョコレートを溶かすには十分な暑さだ。


「涼音、どうしましょう」

「食べるしかないですね」

「それしか無いわよね!」


 だが、この場所で飲食はできない。休憩スペース的なものがあればいいのだが、探すのは後でも別にいい。

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