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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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402/930

屋内型複合レジャー施設にて 8

 涼音(すずね)夏美(なつみ)が離れたのを確認した涼香(りょうか)


「ほら、涼音達はいなくなったわよ。正直になりなさい」

「はあ?」

「あのね、私は知っているのよ。あなたがカワウソ好きだって」

「………………」


 そういえば、涼香からコツメカワウソの写真が送られてきた時があった。


「あとアルパカも好きでしょう?」

「……うっざ」


 涼香の言う通りなため、耳を赤くして悪態をつくことしかできない。


 だが、(あや)がカワウソやアルパカが好きだとして、今この状況でどうしろというのか。


 彩はクレーンゲームが得意な方では無い。ていうかそもそも一定の金額を入れなければ取れないクレーンゲームなどやりたくない。


 カワウソのぬいぐるみは欲しいが、それなら水族館へ買いに行けば済む話だ。


「私はクレーンゲームが得意なの」

「さっきも聞いた」

「あー、ぬいぐるみが欲しいわねー」


 そう言って涼香がクレーンゲームを始める。


 涼香は、ぬいぐるみを上手い具合に回転させ、四回のプレイで見事カワウソのぬいぐるみを獲得した。


「ほら、得意と言ったでしょう?」


 ぬいぐるみを取り出し、したり顔で言う涼香である。


「でも、困ったわね……大きすぎて持てないわ」


 白々しく辺りを見渡す涼香。


「あら、綾瀬(あやせ)彩ではないの⁉ このぬいぐるみをあげるわ‼」

「うっざ」


 と言いつつも、素直に受け取る彩。


「金返す」


 ここの大きなクレーンゲームは、一回二百円なのだが、五百円入れたら三回できるのだ。


 だから、かかった金額は七百円。彩はぬいぐるみを脇に挟み、財布からかかった金額をとりだそうとする。


「私からのプレゼントよ。ありがたく受け取りなさい」


 いつの間にか、景品を入れる袋を持ってきていた。お金を受け取るつもりは無いらしい。


 受け取ったぬいぐるみをその袋に入れ、肩からかける。


「借りができた――と言いたいけど、まああたしには貰う権利あるよな」


 普段の涼香の行いと迷惑度合いなら、ぬいぐるみを貰っても足りない。


 でも、プレゼントと言われると悪い気はしない。


「あらあら、赤くなって可愛いではないの」

「うっざい!」

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