車の中にて 5
「涼音が意地悪言ってくるのよ。私の水風船は危なくて使えないって」
「当たり前じゃないですか。受け取った瞬間爆発しそうですもん」
「ちょっと待って」
ある日のこと、なぜか涼香に呼び出された菜々美。
「なんで私が車出してるのかしら⁉」
今日はこれからここねとデートのはずだったのだが、ここねを迎えに行く前に呼び出された。
まあここねとのデートのには間に合うから全然いいのだが。
「いいではないの」
「いやいいんだけど‼」
どうせここねの家へ迎えに行っても、緊張でなかなか近づけないからいいのだけど。
「運賃取ってもいい?」
「そういわれると思いまして――これですね」
そろそろそういわれてると思って、予めクッキーを作っていた涼音である。
「涼音の作ったクッキーの価値はお金では換算できないわよ!」
「えっ⁉ いいの? 嬉しいわね」
顔は真正面を睨みながら、弾んだ声を出す菜々美。
「芹沢先輩の分もあります」
涼音の作るお菓子は美味しいとここねも言っていた。自分の分とここねの分も貰えるとは、運賃にしては高すぎるぐらいだ。
涼音は小さな袋で簡単にラッピングされているクッキーを紙袋の中に入れて助手席に置く。
「という訳で、送ってもらうわよ」
「まかせなさい!」
断る理由は無い、二人を乗せて車が走る。
「それで、どこへ向かえばいいのかしら?」
「「………………」」
「どうしてよ‼」




