涼音の部屋にて 16
短パンとシャツを着た涼音が、ペットボトルに入った水を飲みながら部屋へと戻って来た。
やはり落ち着く、冷房の効いた部屋。
「あら残念、髪は乾かしてきたのね」
ベッドに腰をかけていた涼香が言う。
「もーう、疲れましたからねえ」
その涼香の脚に頭を置いて寝そべる。ベッドの縁、ギリギリを攻めている。
「お疲れ様。どう? 疲れた以外の感想は?」
シャンプーの香りをふわりと広げながら、涼香が目を閉じる涼音に問いかける。
鬱陶しそうに涼香の手を払いのけた涼音。
「暑い」
「夏は暑いものよ」
「むうぅ……」
唸った涼音が起き上がり、涼香が勉強机の上に置いたポシェットとペットボトルを入れ替える。
ポシェットから取り出したのは、雑貨屋の小さな紙袋だ。
「はい」
目の前に差し出された紙袋に目を見開いた涼香。
紛れもない、涼音からの贈り物だ。
「まだ誕生日ではないわよ」
「なんでもない日の贈り物ですよ」
涼香の隣に座って身体を預ける。
少しだけ困ったように笑った涼香が、受け取った紙袋を開ける。
「あら、これは――シュシュではないの」
袋から出てきたのは、綺麗なエメラルドグリーンのシュシュだった。
「綺麗な海みたいね」
「どうですか? つけてあげましょうか?」
「ええ、明日ね」
その言葉に、頬を膨らませる涼音であった。




