移動中にて 4
目的の本を買い、本屋を後にしようとする涼音。
「檜山さんの買い物早くない?」
「だってこれ以外に用はないし」
「そうだけどさあ! もっとゆっくりお喋りしながら買い物しようよー」
「はあ?」
夏美の猫なで声に、涼音は心底不快な声で返す。
その様子に恐れた夏美は閉口する。
「…………」
「……次、どこ行くの」
もしかすると放って帰られると思ったのだが、涼音はまだ自分と買い物をしてくれる気があるらしく、夏美はホッと息を吐く。
「別に考えてないんだよね」
「じゃあ帰る?」
「帰らないよ!」
用が無くても、友達(一方的)と一緒に遊びたいのだ。それを涼音が理解してくれるかといえば分からないが。
「用が無くても、私は檜山さんと適当に時間過ごしたいんだよ?」
「あたしはしたくないけど」
「そう言うと思った。でもダメでーす、付き合ってもらいまーす」
「だと思った。好きして、汗かかなかったら別にいいから」
投げやりに答える涼音。
そう答えたということは、夏美の好きに連れ回してもいいということだ。
嬉しさに顔をほころばせた夏美は、早速涼音の手を引いて連れ回すのだった。
「ちゃんと付いていくから引っ張るな!」




