水原家にて 22
涼香の問いかけに、彩は対抗心を燃やしながら考える。
そしてすぐに分かる。これしかないはずだと。
「檜山経由で聞いた」
「ボタンを押してから答えなさい」
答えた彩を無視して、ボタンを押せという涼香。
彩は舌打ちをしてボタンを押す。
『答えをどうぞ‼』
「さあ、綾瀬彩の回答よ!」
「うざ……。檜山経由で聞いた」
「違うわ」
「はあ?」
「この問の答えに涼音は関係していないわ」
まさかのヒントに彩は声を詰まらせる。
夏美は涼音と仲良くしたそうにしていたし、その経由で涼香の方へ話が行っていると思っていたのに。
「さあ考えなさい!」
そう言われても、今の答え以外になにも思いつかない。思いつくとしても、それは単純すぎる答えだ。無意識の内にその答えは無いものだと考えてしまう。
だけどなにも思いつかない、それだったら無いものだと思った答えを言う。
『答えをどうぞ‼』
「脅した」
「酷いことを言うのね。不正解よ」
「はあ?」
これが不正解なら、いよいよ答えが無くなる。
難しい顔をして考え込む彩に、涼香がヒントを出す。
「ねえ綾瀬彩、単純に考えれば答えは分かるのよ?」
「うるさい、今考えてるから」
そのヒントも、彩にうるさいと一蹴されてしまったが。
一蹴したはいいが、考えても考えても答えは思いつかない。
僅かな焦りが、大きな焦りになり、彩の思考を鈍らせる。
「綾瀬彩、答えを言ってもいいかしら? 今のあなたでは答えは出せないわ」
一応断りを入れるが、十中八九彩は嫌だと言うだろう。だから涼香は彩が口を開く前に言う。
『答えをどうぞ!』
「聞いたからよ!」
「は……?」
言われた答えはあまりにも単純かつ、大して考えなくても分かるようなもの。
しかし彩は、それを初めから選択肢に入れていなかったのだ。
「聞いたのよ、夏美に。別に嫌がってなかったわよ」
「いや、え……?」
あまりの単純な答えに、呆気にとられる彩。それと同時に、そんな単純極まりない答えを出せなかった自分に怒りを感じる。
「あなた、もう少し踏み込んでもいいと思うわよ」
涼香のその言葉が、彩の心に衝撃を与えるのだった。




