移動中にて 3
「次、どこ行くの?」
「檜山さんが言ってた本屋かな」
「じゃあ本屋で」
本屋に行くといっても、都会にもなると、大型書店が多くある。
その中で涼音が向かうのは、殆ど外へ出ずに行くことができる本屋だ。
複合商業施設から出て、歩道橋を渡って家電量販店の周りを通る。
歩道橋は色んな方角へ伸びており、利用者がかなり多い。夏美は涼音に置いてかれないようについて行く。
「檜山さーん、ちょっと待ってー」
「はあ?」
そんなことを言いながらも、歩く速度を落とす涼音。空いていた距離が縮み、それが再び空かないように歩く。
こんな短時間なのに、既に汗をかいてきている。早く涼しい建物内に入りたい。
「暑いんだけど?」
「それはどうしようもないかな」
文句を言ってくる涼音に、苦笑交じりに返す夏美。
今は夏だし仕方ない。どれだけ早く歩こうと、既に汗はかいてきている。そのため夏美歩行速度は関係無い。
文句を言ってくるが、彩と同じで、なんだかんだで歩く速度を落としてくれている。やっぱり二人は似ている。
夏美は二人の共通点を見つけて笑みを浮かべる。
「なに笑ってんの?」
「うん? いやあ、ちょっとね」
「あっそ」
わざわざ立ち止まって、夏美が隣に来るまで待ってくれる。
不器用だけど器用なことをしてくれる。
彩と似ているが彩と違い、変な照れが無い分、不器用だけど器用なことができるのだろう。
少しの寂しさと少しの不安を感じながら、夏美は涼音の隣で歩くのだった。




