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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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359/930

複合商業施設にて

「で、どこ行くの」


 二人がやって来たのは、駅から直結している複合商業施設だ。とてつもない大きさのビルがそびえ立ち、その中に様々な店舗がある。


「やっぱり友達とお買い物といったら、服だよね!」

「じゃああたし本屋行ってるから、終わったら連絡して」

「なんでぇぇ⁉」

「どぉぉっせあたしに色んな服着せようとするんでしょ? 分かってんのよ、そっちがなにしようとしてるのか」


 十中八九着せ替え人形にされる。


 そもそも今日は服を買う予定は無いのだ。買う気が無いのに、服を試着するなんて、涼音(すずね)にはできない。


「だって檜山(ひやま)さん可愛いもん! そんな檜山さんに、私が選んだ服着てもらいたいもん‼」

「はっ、嫌」

「意地悪ぅ〜」


 しなだれかかってくる夏美(なつみ)を、不快な顔をした涼音が押しのける。


 さっさと買いに行けばいいものの、なかなか買いに行こうとしない。


「早く行けば?」

「じゃあ、檜山さんが私の服を選んで?」

「えぇ……」


 買うつもりなら、一緒に行って選ぶのもまあしてあげてもいいのだが――。


「あたし服とか詳しくないし」


 普段からシンプルな服しか着ていないのだ。今日着ているそこそこオシャレだろう服も、涼香が選んでくれたものだし、涼音自身が服を選ぶとどうしてもシンプルになってしまう気がする。


「それでも全っ然大丈夫! 檜山さんに選んで貰えるだけで嬉しいから」


 その言葉を(あや)が聞くと、八つ当たりで菜々美(ななみ)が爆発することになるのだが、二人はなにも知らない。


「……分かった。でもあたしは服着ないから」

「それは残念だけど……分かった! じゃあ早速服を買いに行こーう!」

「だからくっつくな‼」

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