表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

356/929

水原家にて 19

 ――一方その頃。


「くちゅん」

「あら、なかなか可愛いくしゃみでは――くしゅん」

「噂されているわね」


 水原(みずはら)家にやって来た(あや)と、その隣に座っている涼香(りょうか)がほぼ同じタイミングでくしゃみをした。


 昨日、涼音が夏美と遊びに行くということだったので、彩を家へ招待したのだ。


 無論、涼音みたいに即断られたのだが、勉強しようということでなんとか来てもらった。


 涼香の母は涼香の同級生の間でも有名だ、勉強を教えてもらえば、大幅なレベルアップが期待できる。しかし、唯一の欠点は涼香の母ということだった。


「タイミングがいいし、休憩しましょうか。彩ちゃんは紅茶でもいいかしら?」

「え、あ、はい」


 涼香の母が席を立ち、紅茶を入れに行く。


「お茶菓子は綾瀬(あやせ)彩の持って来たものでいいわよね」


 涼香が彩の持ってきたお菓子の箱を開ける。中に入っていたのは個包装にされたバームクーヘンだった。


「手作りかしら?」

「どう見ても既製品でしょうが」

「冗談よ」


 たったこれだけのやり取りなのに、ぶっ通しで勉強するより疲れる。涼香の母がいる手前、いつものように接することができない。


 重い息を吐いた彩がテーブルに突っ伏す。そのまま眠ってしまいたかったが、そういう訳にはいかない。


 程なくして、紅茶を持って来た涼香の母。彩は身体を起こして受け取る。


「ありがとうございます」

「いいのよ、いつも涼香と仲良くしてくれてありがとうね」

「え、いやまあ……仲良くと言いますかなんと言いますか」


 なんやかんや言いながら、こうして家にやって来るぐらいの関係なのだが、普段関わりを思い出しても仲良くしているとは言い難い。


 歯切れの悪い彩を、涼香が泥船へ突き落とす。


「いつもいつも罵られてるのよ。うざいとか馬鹿とか」

「それは事実なのだから仕方が無い――あっ」


 反射的に反応してしまった。事実なのだが、人の親がいる前で言うことでは無い。


 冷たい汗が背中を伝う。窺うように、涼香の母を見る。


「あなた達の関係は知っているわ。あなたには厳しくしてくれる友達が必要なのよ。ということで彩ちゃん、これからも遠慮せずに言ってやってね」

「えぇ……」


 はいと言っていいのだろうか。この雰囲気だと多分大丈夫だと思う、だって隣の涼香の顔がうるさいもん。


「はい」


 隣で、涼香が恐ろしいものを見たような表情になるが、気にしない。


 彩の答えに満足した涼香の母が、早速バームクーヘンの袋を開けて食べ始める。


 彩も涼香も、バームクーヘンを食べ始める。少しの間の休憩だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ