夏休みにて 27
――一方その頃、学校では。
「だーかーらあっ! ここはこう解くって言ってんでしょうが!」
黒板を叩いた彩が怒鳴る。
「綾瀬彩先生! わたしにはなんのことか全く分かりません!」
そんな彩の怒鳴り声など全く気にしない理子が手を挙げる。
涼香の補習が終わってからも、毎日補習に来ている理子だ。来る度に、毎日学校に勉強をしに来ている彩が教えているのだが、あまりの手応えの無さに、彩は匙を投げたくなっていた。
「あんたマジで馬鹿すぎない? なんで高校生やれてんの?」
「ふっ……運……かな……」
「うざ」
もう十一時前だし、これ以上は付き合ってられないと、荷物をまとめて教室から出ていく彩であった。
――また別の場所、ここねの部屋では。
「菜々美ちゃん、もっと寄ってもいい?」
「え、あ、うん」
「えへへ……」
一応勉強道具類は広げているが、勉強そっちのけで、菜々美に頬を擦り付けるここねである。
菜々美も、ここなら誰にも見られないため、思う存分ここねとくっつくことができる。
しかし、芹澤家にはここねの姉もいるはずなのだが、さっきここねがトイレに行くと言って部屋を出て、戻ってきた頃から気配が無くなっていた。
それを聞こうか悩んだが、まあ別にいいだろうと、頭の中からその考えを追い出してここねの肩に手を回す菜々美であった。




