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水原家にて 14
一方その頃――。
「涼香、これは私が開発した、数学が得意になる水よ」
「……なにを言っているのかしら」
涼香の母が、ペットボトルに入った水を渡す。
ラベルに『数学』と書かれていることを除けば、ただの水のように見える。
「基礎はできたのよ。そして種を撒いた、後は育てるだけよ」
早く飲めと、急かしてくる母に訝しげな目を向けながら受け取った水を飲む。
「……硬水ではないの。しかもスペイン産」
「数学は答えが決まっているのよ? ということは硬水がピッタリなの。それに、産地まで当てるということはあなたも成長しているのよ」
「地理や地学は得意なの」
「その調子で次はこの教科書をやるわよ」
「涼音……早く帰ってきて……」
どこからか取り出された数学の教科書を見た涼香は、出かけてしまった涼音の帰りを待ちわびるのだった。




