水原家にて 8
「さあやってきたわ夕方‼」
「見るからに暑そうですねえ」
「解説の涼音、どうかしら?」
「一歩も出たくありません!」
冷房の効いているリビングから、外を見ていた涼香と涼音。
日は傾き始め、傾き始めているとはいえ、今は真夏だ。まだまだ明るい。
「でも行くしかないわよ」
涼香の母が帰ってくるまでにミッションは完了していなけれならない。日が沈むのを待っていたら帰ってきてしまう。
覚悟を決めた涼香は、タオルを持ってきて涼音に渡す。
顔を顰めながら受け取った涼音、そして涼香の服装を見て目を細める。
「その格好で行くんですか?」
涼音はまだ外に出られる服装なのだが、涼香はいつも通りの中学時代の体操服である。
「着替えた方がいいかしら? どうせこの服、今日洗濯してもらうつもりだし、体操服だから汗をかいてもあまり気にしないからいいと思うのだけど」
胸元に『水原』と刺繡が入っている体操服に、紺色の体操ズボンである。確かに汗をかくのならいいのかもしれないのだが、せめて上の服は着替えてほしい。
「上だけでも」
「……仕方ないわね」
口を尖らせた涼香は素直に上の服を着替えに行くのだった。




