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ベッドの上にて 4
「涼音、来なさい」
夏休みのこと。
いつものことだが、いきなり涼香に呼ばれた涼音は、素直にベッドにいる涼香の下へやってくる。
「なんですか?」
涼音がやってくると、涼香はなにも言わず手を広げる。
涼音はやれやれと、声には出さないが態度で示す。
そして、のっそりとベッドに乗り、涼香の腕の中に収まる。
「今日は素直ではないの」
そんな涼音に、涼香がそっと囁く。
「……たまには、こうしないと、先輩が可哀想だと思ったんで」
涼香の肩に頭を埋めて涼音が言う。
照れている訳でもない、ただの本心だ。
「同情するならお金をくれないかしら」
「照れてるんですかあ?」
「そんな訳ないでしょう」
涼香も涼音も、今更この程度では照れることは無い。
人前だと涼音は照れてしまうが、今のこの時、この場所は二人しかいない。
冷房で冷えた身体に体温が心地よい。
「お姉ちゃんと呼びなさい」
「それは嫌です」
下唇を噛んだ涼香が、力強く涼音を抱きしめるのであった。




