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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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31/928

掃除の時間にて

 ある日のチョークの粉がもうもう立ちこむ三年生の教室。


 粉の発生源はある人物の手に持つ黒板消しクリーナーの中身だ。それを持っている人物とは。


「やってしまったわ……」


 涼香(りょうか)である。


 終礼後の掃除の時間。掃除当番の涼香は黒板の掃除をしていた。クリーナーで黒板消しを綺麗にして、黒板を綺麗にする。そんな単純な作業なのにどうしてこうなったか。


 他の掃除当番のクラスメイト達は窓を開けたり、廊下に避難している。


「ちょっと先輩真っ白じゃないですか」


 丁度やって来た涼音(すずね)が涼香に駆けよろうとするが。


「待って涼音」


 それを涼香が手を伸ばして待ったをかける。


「これは涼音が手を出すことではないわ、これはクラスで解決すべき問題よ」


 なぜかやらかした涼香が、ここは任せろと言った風な態度をとっている。


「そうだよ涼音ちゃん、涼香がやらかすことは予想できていたはずなのに任せてしまった私達の責任よ」


 窓を開けていたクラスメイトがそう言うと、他のクラスメイトも任せろとばかり力強く頷く。


 それからのフォローは早かった。舞った粉を外に出すと、すぐに窓を閉めて落ちた粉が舞い上がらないようにして、箒と塵取りで取っていき、その間に雑巾を濡らしてきたクラスメイトが水拭きで掃ききれない粉を綺麗に拭き取る。ちなみに涼香は「とりあえず動くな」と言われてその場で突っ立ていた。


 さすがクラスメイト、涼香がドジをしてもそのフォローに慣れていた。


 粉が片付いた後、クリーナーの中身をクラスメイトに渡して箒に持ち替えた涼香も掃除に参加する。


 その後あまり時間はかからずに掃除は無事に終了。リュックを背負った涼香が廊下で待っている涼音の下へやって来る。


「ブレザー汚れちゃいましたね」


「そろそろ衣替えの時期ということね」


「ブレザー着ているのは先輩ぐらいですけどね」


 今日のドジはちょうどよかったのかもしれない。そう思った涼音だった。

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