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水族館にて 10
この階ももう終わりが近いらしく、『太平洋』の水槽の底が見える。
泳いでいる魚だけでなく、底の、それも隅っこに魚が集まっていたりする。
「底よ」
「ですねえ」
この位置からだと、魚が空を飛んでいるように見える。
遠くの方を泳ぐジンベエザメを涼音は眺める。
「後ろは……クック海峡ね」
涼香の声をする方を見ると、『クック海峡』の水槽がある。
スミツキイシガキフグという、ハリセンボンに似た魚や、スカーレットラス、レッドピグフィッシュ、コバンザメなどがいる。
「色々な生物がいていいではないの」
「自然って感じですね」
涼香と並んで水槽を覗き込む涼音。
どことなくリラックスしているような雰囲気を感じる。
「次はなにが待っているのかしらね」
恐らくメインは『太平洋』だ。それを過ぎた後、どんな展示を二人を楽しませてくれるのだろうか。
「もう少し見ていきましょうよ」
「そうね」
水の中を漂うように、二人はもうしばらくこの階を楽しむのであった。




