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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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水族館にて 7

 『太平洋』の水槽は、水槽をぐるっと一周できるように建物の中央に設置されている。


 中央が『太平洋』で外側には、上の階で見た水槽の底がある、『モンタレー湾』の水槽のでは、アザラシやアシカがやってきたりする。


 そちらも可愛いく、夢中になる来館者も多いのだが、涼香(りょうか)は興味が無いらしく、中央の水槽に張り付いたまま移動している。


「いいではないの……お腹がすいてきたわ」

「さっき食べたばかりじゃないですか……」


 水族館の楽しみ方としては間違っている気もするが、水槽を割って魚を獲る訳でもない。楽しみ方は人それぞれだ。


 『太平洋』の近くには、『瀬戸内海』の水槽もあった。


 スズキやタイ類、ウツボやマダコ、イセエビまでもいる。


涼音(すずね)! 真鯛よ!」


 ジンベエザメを観察していた涼音の肩を叩き、『瀬戸内海』の水槽を見るように促す。


「わあ、食べたことある魚だ」

「ふふっ、さっきあなたを食べてきたわ」

「えぇ……」


 十中八九マダイに向けて言われた言葉に涼音は困惑の声を漏らす。


「美味しかったわよ」


 とりあえずスルーしてもいいだろう。


 涼音も『瀬戸内海』の水槽を覗き込む。


「あ、タコですね」

「たこ焼きも悪くないわね」

「おっ、ここにもイセエビが」


 涼音がそう言うと、隣から人がガラスにぶつかる音が聞こえたが涼音は気にしない。


「やはり美味しそうね」

「イセエビも大人になってからですね」

「らしいわよ」

「誰に言ってるんですか」

「ウツボよ」

「えぇ……」


 ウツボはさておき、普段よく食べる魚の生きて泳いでる姿を見ると、やっぱり自分達は生き物の命を頂いて生きているのだと、改めて自覚する。


「涼音」

「なんですか?」

「楽しいわね!」

「先輩の楽しみ方ってマニアックですよね」

「照れるわね」

「別に褒めてませんけど……」

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