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水族館にて 6
「涼音見なさい! 魚よ!」
「見てますよ」
眼前に広がる巨大水槽、多種多様海の生物達が自由に泳ぎ回っている。
群れを成して泳ぐ魚や羽ばたくエイ、隅っこでじっとしている魚、そんな水槽内で一際存在感があるのは――。
「ジンベイザメがいるわ!」
成長すれば体長十メートルを超す世界最大の魚類だ。
「デカいですねー」
水槽に張り付く涼香の隣で涼音は感心したように呟く。
「エイもいっぱい魚もいっぱいよ!」
「そですね」
魚達に夢中になっている涼香、涼音はそんな涼香のほっぺたをムニムニ触るが、涼香は咎めず気にしない。
随分熱心に見ている涼香の隣で、展示されている魚の種類を確認する涼音。
「へー、クエがいるんですね」
「クエですって⁉」
「わーすごい食いつき」
クエといえば、よく高級魚だとか幻の魚などと言われている。クエ鍋も有名でよく聞く。
「食べたいわ」
「お高いと思いますよ」
「大人になったら食べましょう」
「そうですね」
口元を拭う仕草をした涼香は再び水槽を覗き込むのだった。




