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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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水族館の入り口にて

 昼食を終えた四人は、そろそろ入館時間に差し迫っているため、直射日光を避けながら水族館へと向かう。


「暑いのは一瞬……! 行くわよ!」


 先陣を切る涼香(りょうか)の後を涼音(すずね)菜々美(ななみ)とここねはついて行く。


 急いだはいいが、入館するための列ができているのを見て、涼香は次第にゆっくりと歩くようになる。


「並んでいる……⁉」

「早く並びましょう、暑いです」


 後からやってきた涼音が立ち止まった涼香の背を押して並ぶように促す。


「暑いね……」

「大丈夫? はいタオル」


 早速汗をかいているここねに菜々美はトートバッグからタオルを取り出す。


「ありがとう、菜々美ちゃん」


 ハンディ扇風機でも持ってくればよかったなと菜々美は少し後悔する。


「涼音、暑いわ」

「あたしも暑いです」


 時間になって入館は開始されているが、人が多いため、まだ中に入ることができない。


 とりあえずチケットを握りしめ、すぐに入館できるよう準備する。


 真昼の太陽が容赦なく身を焦がす。日焼け止めは塗っているが、それも貫通しそうな勢いだ。


「私が壁になるわ」

「いいですよ――うわっ、汗落ちてきた!」

「汗が止まらないわ……」

「ああもう」


 涼音は壁になる涼香のポシェットからハンカチを取り出して涼香の汗を拭き取ってあげる。


 車だし、水族館は館内だしで暑さ対策できるものを持ってきていないがハンカチは最低限持ってきていてよかった。


「ぁぁぁぁぁぁぁっ……!」


 後ろから菜々美の声が聞こえるが涼音は気にしない。


 徐々に列は進んでいき、ようやく屋根のある場所までたどり着いた。


「背中が暑いわ」

「なんかすみませんね」

「礼には及ばないわ」


 壁を終えた涼香がやりきった表情で汗を拭う。


 影になるといくらか暑さはマシで、じっとしていればそれ程汗はかかない。


 徐々に進む列に流されながら、遂に四人の順番がやってきた。


 入館ゲートで係員にチケットを見せ、改札みたいなものにチケットをかざして入館する。


 中に入ると少し階段になっている。


「さあ! やってきたわよ水族館‼」

「はしゃぎすぎないでください。危ないですから」

「ここね、もうちょっとで中に入れるよ」

「うん……頑張る」


 ここねとゆっくり階段を上がる菜々美に涼香を捕まえてくると言って、涼音は先に行く涼香を追いかけるのだった。

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